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バッドティックとの戦い(前編)

2012年09月03日(月)

バッドティックが発生し、多くの口座がマージンカットをくらったという事故は今まで何度もあった。その理由について考え、いくつかのアイデアを考える。

大体の場合、バッドティックは以下の3パターンで発生している。

A)2,3ポイントのスプレッドで推移していたレートが突然両サイド大きく開く場合。
B)どちらか片方だけ(下の例ではBIDサイド)が大きく離れる。
C)BID、ASK両方とも一方に(例では下向き)大きく離れる。

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A,B,Cすべてにおいて、この通貨を買い持ちしている口座においてマージンコールがかかる危険性が高い。売り持ちにしている場合はAのみでそうなる可能性が高い。

なぜそうなるのかというと、ポジションの評価損益を計算するとき、ほとんどのシステムは、買いポジションはビッドで評価し、売りポジションはアスクで評価するからである。それは、現実に即した評価損益を出すという目的においては間違いではない。しかし、この計算方法の安定性を確保するには、極端にスプレッドが開くことがないことが前提になる。通常0.5程度のスプレッドで動いているときに突然10ポイントとか30ポイントにスプレッドが開き、数秒後にまた0.5に戻った時、このロジックだと強制ロスカットになってしまう口座も出てくる。そこに問題がある。

■従来のやり方

このロジック「買いポジションはビッドで評価し、売りポジションはアスクで評価する」の問題は、本当にその数秒間の間スプレッドは本当にそれぐらい開いたのかということである。A,B,CのケースでA,Bにおいて一瞬スプレッドは開くものの、直後に元に戻る可能性が高い。そうなると、バッドティックだったという判断の入り込む余地が生まれ、それにより強制ロスカットされた口座においては修正の議論が巻き起こる。Cの場合は、A,Bに比べビッドにつれてアスクも下がったことから、たとえその数秒においても実際にマーケットは下に下がったという予測が成り立つ。言葉を換えれば、その動きに妥当性がある。スプレッドが両サイドに一瞬開いたからと言って実際にその分の流動性がなくなったとは言えないのである。

■仲値評価

一方、もう一つの評価の仕方として「スプレッドの仲値を使って評価損益を出す」というやり方がある。これだとA,Bの場合においても上記のロジックに比べ変化のインパクトは薄い。上下同じ幅だけ開いたら仲値に変化は生まれないからである。

では、実際に決済されるときに使うのが売りはアスクで買いはビッドにも関わらず、評価のときだけは仲値を使うことは正しいのか、という質問が聞こえそうだが、私の意見としては、正しいかどうかは別にして、「あり」か「なし」でいえば「あり」である。その代り、取引を行う顧客にはあらかじめ評価損益は仲値評価なので、実際に決済されるときは見た目の有効額よりは減ることが理解されていなくてはならない。そもそもインターバンクでは「評価は仲値」を取ることが多かった(今もそうかどうかはわからない)。

画像(180x120)

そもそも時価評価というのは買ポジしかないブックならば常に市場の買い気配を使って評価すればより現実的な資産価値が計算されるが、売りポジ、買ポジが混ざっているブックの場合、いちいちビッド、アスクで計算する意味があまりない。日々変動する市場の気配値の変動率を考慮すれば仲値で一括して評価する合理性というものが成立するのである。

翻ってこのFX業界においても、仲値で評価することの合理性は十分あるのではないかと思われる。特にここまでスプレッド競争が激化しドル円で0.2を出す時代出である。大事なのは上述のとおりその計算の仕組みと影響について誤解のないように顧客によくよく事前告知しておくことである。

この仲値評価方式の効果として、スプレッドが上下に開くときに起きる強制ロスカットは回避することができる。強制ロスカットを発動するのは常に「仲値」だからである。

■仲値をつかったら

さてそこで、このロジックをどこまで反映させるかという点で、私の意見である。

1)強制ロスカットをするプロセスだけが常に仲値を使って監視する。そのプロセスの中でのみ計算する口座の有効額(☆)がポジションの25分の一を割り込んだら強制ロスカットを発動する。口座状況の画面上での有効額に含まれる評価損益は上記の「買いポジションはビッドで評価し、売りポジションはアスクで評価する」というロジックで変えない。

☆法律的に、実預託額ということばの定義にはその中身の評価損益をどう計算するかにはここまで細かく触れられていない。前例、業界での常識との整合性、合理性があればいいはずである。

2)強制ロスカットをするプロセスも、口座状況の画面上での有効額に含まれる評価損益を計算するプロセスもともに仲値方式にしてしまう。

どちらの方法でも、画面上の見やすいデザインと取引説明書での明確な説明さえあれば問題にはならないはずである。仕事柄いろいろな業者の画面を見るが、この程度の複雑さをとやかく言うほどどこも画面の仕様はシンプルではない。個人的にはすでに十分複雑な作りになっているものが大半である。この部分の複雑さに比べればほかにもっと単純化する余地はいくらでもある。ちなみに10年以上前に私がデザインしたシステムは仲値評価だったが、今は誰も採用している気配がない。

■実際のレートの動き

上述の3つの例のうち、どれが実際のレートの動きといえるだろうか。あるいはその可能性が一番高いだろうかとの問いに、私自身、答えはCであると書いた。CだけがA,Bとは違うと。なぜなら、A、Bはどちらも、ビッドとアスクが通常よりも大きく離れた状態である。今まで2,3ポイントのスプレッドであったものが、突然それ以上に大きく「外に」開いているだけである。これは月曜の朝や金曜の終わりごろにはよくあらわれる現象であり、経済指標が発表される前も、ある程度スプレッドは両サイドに開く。すなわち、こういう状況は「市場に競争が働いていない状態」もしくは「市場に興味が生まれていない状態」であるといえる。プライスを出す側にとっても、常に0.2や0.5でプライスを出し続けるのは決して楽なことではない。インターバンクのプレイヤーの中でも、マーケットリーダーになる銀行というのはあるもので、彼らが一瞬でも消えると相場はその分緩む。一つの銀行に24時間常に0.3のスプレッドを出し続けなさい、とはだれも強制できないことである。

■顧客として納得のいかないパターン

では何のイベントもなく、週明けでも週末でもないときに突然こういうA,Bの状態が発生したときにそれをバッドティックであると判断することができるだろうか。こういう動きが発生した瞬間、ディーラーは世の中で何か突発的なイベントが発生したのかと慌ててニュースに目をやるだろうし、インターバンクでどこか大きなヘッジファンドがドデかい売りを仕掛けてきたのかと、とりあえずいろいろ考えて情報を探るだろう。その結果、単なる入力ミス、もしくは、そもそもミスではなくて、そのレートを常に入れていた銀行がいたのであるが、通常はもっとタイトなレートが前にあるから見えなかっただけなのだといった“うろたえるに値せず”という結論に至るまで数分か、早くても数十秒はかかるだろう。しかし、システムはそんなことは考えずに、上記のとおり、買いポジションはこの離れたビッドで評価損益が計算されるために、大きな評価損を出し、結果マージンカットの憂き目にあう。そしてその直後相場はもとの水準で元のスプレッドに戻ったりするのである。顧客として納得のいかないパターンが生まれる。

■出す側の理屈

もし、この離れたビッドをだしていた銀行が、いつもこれぐらい離れたビッドをだしています、と言ったらどうなるか。これをバッドティックだったと言えるだろうか。あるいは、その主張を認めた上で、イベントも何もないのにタイトなレートを出していた銀行がその配信を止めたからそうなってしまったのだからそれらの銀行のせいだ、と責められるだろうか。止めた理由が、出したくなかったからというのはいけないのだろうか。あるいはサーバーが故障して配信できなかったというのは、責任を負うべきことなのだろうか。そんな責任はどの銀行も原則負ってはいない。しかし、現実にくりっく365ではかつての南アランド円の問題で、コメルツは責任をとった結果になっている。これはそういうタイトなレートを出し続けます、という約束をしていたからそういう責任を取らされたと思うのだが、少なくともEBSやロイターやこのOTCのFX業界にレートをだしている銀行は、そういう責任を負わないはずである。

たとえば、ドル円のレートを出している唯一の銀行Aがスプレッド0.5で100万ドルまで、1.0で500万ドルまで、そして10.0で2千万ドルまでの3つのレートを同時に配信していた時に、ここに600万ドルの売りが一発で入れば、残るのは10.0のレートだけになる。この瞬間が画面上で見えたら、その瞬間はスプレッドが0.5から一気に10.0に開いてしまう。

繰り返すが、こういう例が現実にあるとすると、こういうA,Bの状態が生まれたときに、そのレートがバッドティックであるかどうかという判定はできないのではないか、というのが私の考えである。ならば業者として、不合理というか不条理というか、異常なレートによるマージンカットから顧客を守るためにはそのシステムのロジックをなんとかこういう状況に対応できるように改良するしかないではないか、というのが私の提案の出発点である。




Posted by 尾関高

プロフィール

尾関高

尾関高

1986年名古屋大学経済学部卒業。1988年サンダーバード経営大学院(アリゾナ州、米国)卒業。主に日短エクスコにて約9年間、インターバンクの通貨オプションブローカーを経験し、1998年からひまわり証券(旧ダイワフューチャーズ)にて日本で最初に外国為替証拠金取引をシステム開発から立ち上げ、さらに、2006年5月に、これも日本で最初にCFDを開始した。
その後米国FX業者でのニューヨーク駐在や、帰国後日本のシステム会社勤務等をへて、現在は、日本の金融システム会社勤務。そのかたわら、本業のみならず、FXや新たな金融市場にかかわるさまざまな分野においても積極的に意見具申中。
拙著に、「マージンFX」(同友館、2001年2月)と「入門外国為替証拠金取引〜取引の仕組みからトラブル防止まで〜」(同友館、2004年6月)、また訳書「CFD完全ガイド」(同友館、2010年2月、著者:デイビッドノーマン)がある。

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