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PAMMとLAMMの話+

2014年01月17日(金)

外為証拠金取引のシステムにおいて米国では運用マネジャーが複数の投資家の資金を利用して売買を行う仕組みには2つある。それらはPAMM口座とLAMM口座とよばれる。それぞれ、PAMM - Percentage Allocation Management Moduleで、LAMM - Lot Allocation Management Moduleの略である。「比率分配型」と「取引額分配型」とでも訳そうか。どちらにも参加者には売買を判断し実行するマネジャーとそれに従う顧客がいるが、業者から見ればどちらも顧客であることに変わりはない。

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PAMMの場合、システム的にはマネジャーが取引した結果発生する損益をクライアントが入金した証拠金残高比率に応じて分配する仕組みである。米国においてはマネーマネジャーというステータスが存在する(確か記憶が正しければ9人までのクライアントを募ることができるはだがこの記憶に自信はない)。少人数の投資組合、あるいはファミリービジネス的な用途を想定したスキームに見える。あくまでも個々の顧客は自分の取引口座をマネジャーと同じ業者で開いて、そこに資金を預ける。業者側のPAMMのシステムは、マネジャーの口座とそれら複数のクライアント(マネジャーから見ればこれらの顧客はクライアントになる)口座を紐づける。マネジャーはクライアントの資金を元手に売買を行い、その結果から生まれる成功報酬を得る。マネジャーは取引ごとに手数料を取らない。これにより利益相反の可能性をつぶす。PAMMはこうしたスキームに利用される。日本にこのようなマネーマネジャーと呼ぶ制度はないが、「運用業」(いわゆる一任勘定とか投資顧問)として合法的に契約できるのならこのPAMMの仕組みは利用できる。

例を挙げて説明すると、クライアントC1が10万円、C2が40万円、マネジャー自身Mが50万円を預けたとする。そうすると、マネジャーにはトータル100万円の与信が生まれたことになる。その与信の範囲でマネジャーは売買を開始する。その結果一日で1万円実現利益を上げたとする。そうすると日締めのタイミングで、マネジャーには5千円、C1には1千円、C2には4千円が実現利益として計上される。C1,C2は自分の口座は「取引口座」ではあるけれと、取引はできないようにロックされる。入金、出金もマネジャーとの調整が必要になる。取引の詳細もクライアントの口座にログインしても見られない。取引内容を知りたければマネジャーに直接売買報告書を請求することになる。マネジャーの成功報酬は月次で業者が計算してクライアントの口座からマネジャーの口座に振り替えてくれる。大体そうした機能をPAMMは持っている。

一方LAMMの場合、与信の考え方はPAMMと同じだが、上記の例で行くと取引ごとに、C1、C2でもそれぞれマネジャーが行った売買の5分の1、5分の4の比率で売買がコピーされる。そう、いわゆるコピートレードモデルとなんら変わらない。言い換えればMirror TraderやeToroやZuluなどの売買シグナルモデルは、実際の実装レベルではいろいろ違いはあるにしても概念的にはLAMM口座機能を使っていると言える。

■共通項
PAMMでもLAMMでも、マネジャーも自らの資金を投じて売買を行う場合もあれば自らの資金は入れない場合もある。またどちらの場合でもマネジャーは取引ごとの課金や運用フィーのような固定費は請求しない。あくまでも売買結果から生まれた運用利益から何%という形でしか報酬を求めない。その比率は一般に10%〜20%と割高に見えるが、実際その方が、クライアントとの利益相反が起きず、信頼は保てるし、マネジャーの士気も高まり、結果的に固定の報酬を与えるよりよりよい品質のマネージングになる可能性は高い。

■長所短所
PAMMの長所はシステム的にいちいち取引をC1,C2に派生させる必要がないということ。日中のシステム負荷が少ない代わりに特別なバッチ処理が日時、月次で必要になる。与信の部分だけをうまくマネジャー側に乗せられれば実装が楽になる。ただし、ポジションを持っているときに突然お金を引き出されたりすると困るので、原則ポジションが建っているときは出金ができないか、もしくはクライアント側はマネジャーに対して出金したい旨を告げ、マネジャーにポジション調整をする猶予を与えてあげなければならない。その辺の作りこみが面倒ではある。またクライアントが預け入れている資産のうちどれだけが証拠金として拘束されているかはクライアント側の口座では見ることができない。そのため余剰分がいくらかを自分でチェックすることも難しい。こうしたもろもろのことを考えると、クライアントトが出金するときは出金要求額に対してマネジャーの同意を得た後でないとできないことになる。

LAMMの場合、個々のクライアントが預けた証拠金額に比例して売買がコピーされ執行される。したがって、すべてのクライアントの口座での約定価格が必ずマネジャーのそれと一致する保証はない。むろん業者側がそれを保証する仕組みを提供することは技術的には可能であるが、ひと手間もふた手間もかかる。マネジャー側がレバレッジ何倍をベースに行うと決めさえしてくれれば、それをシステムに実装して、最低1口“のる”にはいくら必要かという逆算は簡単にできる。
クライアントはマネジャーの売買実態を自分の口座においてリアルタイムで目視できる。
ポジションがある状態でも自分で決済して証拠金を全額出すことはいつでもできる。証拠金管理は個々の口座で行われるので、足りなければ売買が執行されないだけである。これらの透明性には大きな価値がある。

■規制上の観点
日本の規制上、後者のLAMMはコピートレードそのものであり、助言業を取ることで原則合法的にシステム上展開は可能であるが(あくまでも技術的な視点で言っている)、前者のPAMMの場合、実質的に他人の資本を使って「運用」を行うことになるので、かつての一任勘定、いまでいう「運用」登録が必要になると推察される。規制当局にはぜひこれらのモデルが有効に活用されうるようなガイドラインを引いてほしいと思う。個々の業者から打診される案件ごとに検討するのではなく、無の状態から先手を打ってPAMM、LAMMについてはこういうルールの下でならやっていいという空間を定義してもらえれば、あとはその中で健康的に業者は頭をひねって新しい価値を生み出すことに専念することができる。

■運用の世界
PAMMも簡単に投資家に提供できるようになれば、投資家にとっても業者にとってもいい話である。なぜなら、運用上マネジャーは投資家のお金をあたかも使って売買しているように見えるが、実際投資家のお金にはタッチできない。投資運用の業界でもあい変わらず詐欺事件が絶えないわけで、そういう性悪説から考えれば、この仕組みはもっと簡単に業者が投資家に提供できるようにするべきではないかと思っている。売買の透明性と資産についての投資家保護が担保される仕組みであるならば、それらが担保されなかった時代のルールは見直してもいいはずである。

世の中プロ顔負けのパフォーマンスを出す個人トレーダーも多い。彼らの多くは決して大金持ちではない。すくなくとも始まりは。一方で、金はあるがいい運用をしてくれる人が見つけられない人も多い。かれらがもっと効率的に出会えれば、日本の資本市場も今よりは活性化されるのではないかと思っている。少なくともNISAよりはコストパフォーマンスはいいんじゃないだろうか。

日本にはヘッジファンドがいないという言葉はいったい何年前から言われてきただろう。なぜアメリカやシンガポールにはたくさんいて、日本にはいないのだろう。単に税制の問題だけではないと思う。24億も使い込んでタイへ逃げたおっさんのニュースを見るにつけ、もっとこの手の仕組みを極めるべきではないのかと思う。PAMMにせよLAMMにせよ、運用は他人に任せても、自己資金の管理権限は渡さないのでそういう不祥事は起きえない。 “お金は渡さない”けど“与信は与える”。そしてその運用状況を投資家はリアルタイムで監視できるというスキームにシフトしたほうが運用者も投資家も安心していられるのではないか。それが確立していればあのタイに逃げたおっさんもそんな不祥事を起こさずに済んだわけである(必ずしもそういう仕組みの問題ではないけれど)。

1990年前後、シカゴのCMEの横のビルには優秀な大学(院)を出た若者たちが自己資金で会社を作り、CTAとしてフロアで取引をしていた。そして、その中からヒーローが生まれ、やがて大手銀行の投資部門に買収されて世界の資本市場を相手に活躍したCRTやサスケハナという連中が育っていった。日本にこういう成功シナリオがないのが残念である。相変わらず運用はサラリーマンオリエンテッドな人たちでほぼ占められ、多くの年金資金の管理者は市場経験もなくただ大手の証券会社や信託銀行の営業マンのすすめるポートフォリオに対して運用比率だけを調整しているに過ぎないようにも見える(みんながみんなそうだとは言わないが)。運用成績が悪くてもベンチマークが下がればそれを言い訳に仕方ないですからと言われれば、ああそうだねと納得してしまう。ヘッジ(オルターナティブ)ファンドもたくさんアプローチしてくるだろうがまず看板が有名かどうかから入られては、どれだけ優秀でも実績と金看板がなければ相手にもしてもらえない。予定利率を2%でやっているとわかっているのに足元のパフォーマンスが0.05%でも特段焦りもしない。焦ったとしても新たな手を打つことにためらいがある。失敗すれば自分の責任になるのは怖い。そもそもそういうリスクを負う仕事を求めてきたわけではなく、人事異動で任に就いた人だと特にそうなる。年金に限らず運用の責務を負うポストにはもっともっとプロを配置するような社会にならないとまずいんじゃないのかと思わずにはいられない。国民年金基金レベルなら、直接ファンドマネジャーを引き抜いて自前で運用するほうがよっぽどいい。資産家一族なら普通にやっていることである。

かつてドイツのBMWのファンド会社にDDで訪れたことがある。言わずと知れたBMW一族の資産を運用する会社だ。そのためだけに何十人というスタッフが自社ビルで働いていた。そういう責任のある資金の運用をする「職人」には成果報酬をベースに評価してうまくいけば何億円ものボーナスが出ても全然文句なしである。結果的に元本が減ることなく予定利率を上回る実績をたたき出してくれるなら、年金をかけ続ける人にとってはなんら文句のないところである。欧米の年金等の大きな資金を運用する連中がそうした戦略で戦力を強化しているとするなら、日本も同じレベルで戦える選手を用意してピッチへ送り出すように変わらないといけないのである。特に短期的に投資運用市場を世界全体で見ればゼロサムなのだから。

今日も円高。GPIFのお金を狙って外からハゲタカがじわりじわりとやってくる。




Posted by 尾関高

プロフィール

尾関高

尾関高

1986年名古屋大学経済学部卒業。1988年サンダーバード経営大学院(アリゾナ州、米国)卒業。主に日短エクスコにて約9年間、インターバンクの通貨オプションブローカーを経験し、1998年からひまわり証券(旧ダイワフューチャーズ)にて日本で最初に外国為替証拠金取引をシステム開発から立ち上げ、さらに、2006年5月に、これも日本で最初にCFDを開始した。
その後米国FX業者でのニューヨーク駐在や、帰国後日本のシステム会社勤務等をへて、現在は、日本の金融システム会社勤務。そのかたわら、本業のみならず、FXや新たな金融市場にかかわるさまざまな分野においても積極的に意見具申中。
拙著に、「マージンFX」(同友館、2001年2月)と「入門外国為替証拠金取引〜取引の仕組みからトラブル防止まで〜」(同友館、2004年6月)、また訳書「CFD完全ガイド」(同友館、2010年2月、著者:デイビッドノーマン)がある。

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