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スイスの乱(スイスショック)−その後

2015年01月19日(月)

過去
私が外為証拠金取引を始めたころからの大きな相場変動を引き起こした事件をリストにするとこういう感じになる。

1998年8月 ロシア危機からのLTCM崩壊:147.66最高値(8/12)
2001年9月 NY同時多発テロ:長期にわたり流動性喪失
2008年9月 リーマンショック:歴史的円高へ
2011年3月 東北大地震・放射能漏れ事件:瞬間的円高、長時間の流動性喪失
2015年1月 スイス中銀突然の通貨防衛破棄:スイス暴騰と10分程度の流動性喪失

ものの10分で38%も為替レートが変動するというのは、私も経験がない。LTCMが破たんしたときでもドル円ではせいぜい10%ぐらい(122−>111円?)だった。この時はまだ外為証拠金市場がまともに始まっていなかったが。

NYテロの時は、変動したというよりは「喪失」したといったほうが実態だろう。リーマンショックは記憶に新しいと思うが、それでも38%はなかった。今回の38%のショックは、スイスフランであったために日本の投資家への影響は限定的だったが、それでも一部の投資家は悲惨な目にあっただろう。たまたま日計りでCHFJPYをショートしていた人は、運が悪かったとしか言いようがない。

17年間で5回というのはかなりの確率と言っていいかもしれない。日数でカウントすると0.16%なので確率統計の正規分布としては3シグマ(3σ)のレンジになる。そこまでのリスク対応をするのかどうか。コストとの戦いである。

米国

米国のFXCMは260億円もの未収金という穴をあけたが、結果一夜にしてルーケディアの救済が実行に移されるあたり、その素早さには“さすが米国”と感心する。アメリカには投資家のリスクテイクの精神が強くあり、かつその意思決定プロセス権限が少数に集中していることを実感する。大きな資本が少ない意思決定者ににぎられていることは副作用もあるが、こういうとき光るなあと。同じようなことが東北大地震の後日本のFX市場でも起きたが、その事後対応は時間的にはかなりかかった。ついでに、ゲインが無傷であったことはさすがといえる。

オーストラリアの業者が私の知る限り2社閉鎖に追い込まれた。これについて特にいうことはない。

Swiss National Bank (SNB)

EURCHF=1.2を死守するといいながら、あっという間にあきらめるあたり、中銀の変わり身の早さには驚くが、予兆は十分あったわけで、それを盲信したほうにも自己責任として飲み込むべきという解釈の余地はある。実際ゲインキャピタルは投資家に対して事前に警告を発し、スイスがらみの証拠金率を引き上げていたらしいではないか。先週金曜の夜、FXCMの株価とゲインの株価をずっと見ていたが、FXCMは12ドルから2ドル割れとなり、最低で1.48ドルまで見えた。一方ゲインは7ドル台で大割れすることなく済んでいた。FXCMについてはこの融資のニュースで翌週の株価が興味深い。あわてて売りまくった人は悔しい思いをすることになりそうである。それはさて置き、中銀が通貨防衛のためにマイナス金利を再発動した時点でやばいなと思えと結果論で言われるのも仕方ない。なんとなく1992年ジョージソロスの英国中銀に対して仕掛けた歴史をほうふつさせる。これはイタリアの切り下げをトリガーとして彼が仕掛けた事件だったが、今回はドイツの「緩和しちゃうかもよ〜」のトリガーに中央銀行が戦わずしてタオルを投げた格好になったようだ。

通貨防衛はコストがかかる。投入した資金がプールされる資産はどんどん劣化していくことに耐えられなくなる。日本も為替介入はお家芸だが、それは米国債という資産に積み上げられていく。その資産が劣化しているかどうかは別として、防衛に失敗するとその後の流血がおびただしいものになる。スイスは輸出立国ということらしいが、日本も“かつては”そうだった。なので円高は嫌いだったから日銀の円高介入はお家芸だった。ただし無制限介入はしたことはない。さらに言えば、近年日本は貿易赤字国である。いつのまにか輸入立国である。日経225採用銘柄全体で円安の恩恵を受ける企業ばかりが並べば、円安=株高もわかるが、だからといって経済全体の実態を表してはいない。

防衛策なし

前回でも書いたが、投資家にとってこうした相場の激変に対してとりうる防御策はない。しいて言えば、レバレッジはかけるなという原則論しかない。業者側においてはたとえカバーポジションの戦略がうまくいっても、それを処理するシステムにとっては膨大な負荷がかかる事象である。そうなると、通常市場でプライスメイクをする銀行のシステムも停止する。仮に停止していなくても、次のレートとしていくらで出すかというモデルが働かなくなる。あのとき、私が午後6時35分にスイス円のレートを出せと言われたら、とりあえず130円―160円というレートを出したかもしれない。気合を入れても135−145ぐらいだろうか。そこで誰かがどちらかをヒットした時点からだんだんとマーケットが見つかり始めるものである。まさにオークションそのものになる。私が好んで使っているFXのサイトのEURCHFのチャートでは18:30から18:35の間レートがない。18:30で1.2だったレートが、18:35には1.02になり、その5分後(18:40)には0.79まで落ち込んでいた。

ロスカット問題

証拠金の計算モデルは常に評価するレートが得られるという前提に立っている。仮にレートがない状態になると、証拠金計算モデルは停止する。そんなときに、スイス円で150円というレートがシステムに放り込まれれば、システムは単純にそれで計算をして、ロスカットを発動する。そのレートがバグであるという判断は150円というレートの一回目には反応するかもしれないが、それが数回以上続けば本物と理解するものである。実際、あのときスイス円で160円がシステムに放り込まれても、そればシステム的にはバグ扱いしたとしても、だからといって本物ではないということはだれも判断はできなかった。何がバグレートで何が本物かはそのレートで取引した人が世界中にどれくらいいるかで決まる。インターバンクのオプションの取引では観察対象ルールとしてインターバンク間で3百万ドル以上実際に取引されたレートだけを使うとか、EBSで取引されたレートを使うとかいろいろルールがある。つまり「気配」は使われない。ところが証拠金の計算では「気配」を使う。なぜならこの計算は過去の取引履歴を調べることができないからである。今現在のレートを本物かどうかと判断しなくてはならないから、実際の約定を調査する暇などないのである。

だけにこういうシステムは配信するレート、証拠金を時価評価するレートに神経を使う(はずである)。今まで見たモデルでは、クロスのマイナーなレートに対しては、ドルメジャーのレートの裁定値も計算してそれらとのかい離、すなわち裁定率もバグかどうかの判断に使うというのが一番堅牢なロジックだったが、それとてドルメジャーがバグを吐き出せば元も子もない。

いわゆる対ドルG7通貨ではほぼそうしたバグが入り込む余地はないように見えるが、対ドルであってもそもそもインターバンクの流動性の低い通貨ではどういうバグが入り込むかわかったものではない。たとえばUSDTRYとかUSDHUFあたりは心配な通貨ペアである。ましてやそれらTRY、HUFのマイナークロスとなるとその危険性はさらに大きい。こうしたバグをバグと判断するかどうかはやっぱり経験のある人間がするのが一番いいのは明らかである。しかし、そういう前提にたった運用をしているシステムはいまや皆無といっていい。

事後策

要するに取れる対応は事後的なものにならざるを得ない。それはどういうことか。
まず、激変が終わった段階で情報を協会が収集する。そこには店頭と取引所両方参加する。CP側からも収集する。それらを総合的に判断して、その時間帯のハイローを決定する。それにしたがって各社必要な訂正処理を行う。こういうルールをできる限り客観的な数値をもってルール定義することとそれを投資家に開示する。このルールがあれば、それをシステムが迅速に修正対応できるようなプログラムを組むことはある程度可能である。この作業を迅速に行うことが投資家の資産を守るという意味では一番重要である。疑心暗鬼のまま投資家をほっておくことが一番よくない。次の投資判断ができなくなる。「最良執行方針」は欧州ではかなり明確な概念として使われている。日本でも証券行においては存在するがそれは取引所取引を前提とした概念である。これが店頭取引に対しても同様に適用され、その概念を担保する仕組みが確立されるべきであることはかなり前にここでも書いたことがある。そういう対応が「公正」という価値観からすれば望ましい。

次のスイスフラン

次の類似リスクを抱えている通貨はと言えば言わずもがなの中国元である。金利がいいからというだけの理由で手を出す通貨には見えないと昔から言っているのだが、あえてそれをしたいならせめて香港ドルでやればいいと思う。そっちのほうがまだましだが、相関性は当然高いので元に引きずり込まれるのは間違いない。ちなみに元は必ずしも通貨高のほうに振れるリスクだけとは考えていない。

他隣国通貨への影響

USDHUF
ハンガリアンフォリント:2014年5月あたりの220.0ぐらいから277.00までフォリント28%安状態
USDPLN
ポーランドズロチ:2014年7月あたりの3.07ぐらいから一貫してズロチ21%安で現在3.73。
USDCZK
チェコルナ:2014年5月あたりの19.6ぐらいから一貫してルナ29%安で現在24.1。

信託の出番

日本市場は今回のスイスフラン騒動にはほとんど巻き込まれずに済んだ。アルパリで口座を持っていた人は面倒なことに巻き込まれたが、少し我慢すれば預けた証拠金はほぼ返ってくる。返ってこない分があるとすれば、それは信託決済が2日遅れである分のリスク分(今信託口座にある実預託額と今実際にすべてのポジションを決済した時点での実預託額の比較で、今のほうが少ない場合)が業者側で余分に保全されていないケースである。今のところ全額返ってくると通知されている。

海外好きな個人投資家

海外ブローカーで取引をしている投資家は、今回の事件でかなり痛い思いをしたかもしれない。たとえEAがうまくいっていたとしても、資金を預けている業者が信託保全をしないまま飛んでしまえば絵に描いた餅となる。さらにその業者が当該国の登録業者でなかった場合は、文句を言う当局もない。仮に当局があったとしよう。それがセイシェルやベリースといった南国ののんびりしたお国の当局である。いったい何を期待できるといえよう。日本の田舎の郵便局の窓口の対応にすらいささかも及ばないと想像するべきである。




Posted by 尾関高

プロフィール

尾関高

尾関高

1986年名古屋大学経済学部卒業。1988年サンダーバード経営大学院(アリゾナ州、米国)卒業。主に日短エクスコにて約9年間、インターバンクの通貨オプションブローカーを経験し、1998年からひまわり証券(旧ダイワフューチャーズ)にて日本で最初に外国為替証拠金取引をシステム開発から立ち上げ、さらに、2006年5月に、これも日本で最初にCFDを開始した。
その後米国FX業者でのニューヨーク駐在や、帰国後日本のシステム会社勤務等をへて、現在は、日本の金融システム会社勤務。そのかたわら、本業のみならず、FXや新たな金融市場にかかわるさまざまな分野においても積極的に意見具申中。
拙著に、「マージンFX」(同友館、2001年2月)と「入門外国為替証拠金取引〜取引の仕組みからトラブル防止まで〜」(同友館、2004年6月)、また訳書「CFD完全ガイド」(同友館、2010年2月、著者:デイビッドノーマン)がある。

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