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外為証拠金取引業における最大のリスクとは(前編)

2015年02月15日(日)

■融合した市場リスクとシステムリスク

一般に本業に絡むリスクカテゴリーとして以下のものがあると考える。

市場リスク
取引先リスク
決済リスク
システム障害リスク
風評リスク
オペレーショナルリスク
コンプライアンスリスク

これらの中でもっとも神経を使うのが、市場リスクとシステム(障害)リスクである。この二つはもう切っても切れない関係であり、ほとんど区別がつかなくなりつつある。以下、それぞれのリスクについて、ざっとであるが振り返ったうえで、市場リスクとシステムリスクの関係に触れてみたい。

■市場リスク

先日のスイスショックが最も卑近でかつ史上最大(少なくとも1998年以降)のボラティリティと流動性の喪失を出現させたことは改めて説明するまでもない。

この経験からもいえることは、本業界で問題なのは、一日とか一時間単位のボラティリティではなくて、レートがティックから次のティックへ更新されるときの乖離率(幅)だということにもっと意識を移さないといけないということである。1時間足でも1分足でもそれらの変動率の観察には何の意味もないことはスイスショックでもよくわかったはずである。ティック足で事象を観察しないとシステム内部を通過する流動性に何が起きているかという実態が見えてこないのである。何故なら、多くの業者はティックごとに追証判定や強制ロスカット判定を行い、かつその時のレートで実際のロスカットを行っているからである。したがって、レートがワンティックで4%以上動いたら(すっ飛んだら)少なからぬ口座で未収金が発生することはまず間違いない。ここではあくまでもFXシステムがティックベースで証拠金計算をしている前提で考えている。一部の業者では、その判定を秒単位とか数秒単位に間引いているかもしれないが、それはここでは、話を複雑化したくないので、ほぼ同じこととして取り扱う。さらに、4%以上動いたときのCPからの配信レートをカバー側でたたいても、たたいても約定しないという現象は流動性の欠如としてとらえられがちだが、もっと細かく顕微鏡倍率を上げて見てみれば、その流動性欠如の原因の多くはCP側や業者側のサーバーの負荷の問題という現象が大きく絡んでいることに気が付くことだろう。これをすべて流動性の枯渇としての市場リスクとしてとらえるか、あるいは更なる細かい分析を行って流動性リスクと後段のシステムリスクとを区別してとらえるか。どっちであっても密接な関係があるというか、すでにこれらは表裏一体だということを念頭に置こう。

■取引先リスク

取引先に預けているお金、もしくは世の中時価評価なので、預けている資産から預かっている負債を引いた純資産がその対象額となる。法令上これに指定された掛け目を乗じた取引先リスク額が計算される。法令はいいとして、具体的にお金を預けるCP側はほとんどの場合は国際銀行である。一部そこにヘッジファンドや先物業者がCPとして参入している。この先物業者にはアグリゲータも含まれる(LMAX, CFH, HotSpotなど)。一般に、銀行よりも先物系のほうが要求してくる証拠金率は低い。それはCP側が肩代わりする取引先リスクとなる。片務上位側ではこれを“与信”と呼ぶ。

与信を与える側は相手のバランスシート等を評価して決めるものだが、非銀行系がオファーする超低率証拠金の決定根拠は結構いい加減であるかの印象はぬぐえない。結果FXCMはとんでもない損失(未収金)を出したが、全体の10%の顧客が抱える60%の未収額は、たぶん法人(ファンド系)だろう。彼らには当然与信が与えられていただろうから被害はでかい。銀行はそこまでぬるくない。

いみじくも今回のスイスショックは、世界的に見れば『日本の外為証拠金取引業者は欧米に比べてこうしたリスクに強い』という幻想を与えたかもしれない。何故なら、ほとんどの業者においてはこの時のトレーディング損を出していない(むしろ逆?)。スイスという日本人にとってはマイナーな通貨であった(協会の統計等を見ると取引高シェアは1%に満たない)ために未収金も33億円ですんだ。市場の規模を考えれば、ごくわずかと言える。これがドル円で起きたらと思うとぞっとするが、そうなると日本だけでなく世界中で、今回のスイスショックの数百倍(?)のレベルで、インターバンクを巻き込んでの衝撃が走ることになる。ちなみにそのシナリオが実現するとき、世の中は外為証拠金取引どころではないだろう。

■決済リスク

お金を払う約束の日にそのお金が用意できるかという話。そういう意味では受渡リスクともいえる。信託義務が課せられてからは客の預託金を利用してCPに預託することができなくなったので、当時はあたふたした業者も多かったが今は安定している。このリスクはそれ以来議論の俎上には上がらない。これからこれが議論を呼ぶとするなら、店頭外為証拠金取引に対してもCCP(集中決済)を義務化するかどうかが検討されだしたときだろうが、今現在手元のキャッシュフローに問題ない業者にはあまり問題とはならない。

利益は出ているが、現金が期日までに払えない、なんてことは事業をしている人なら日々感じるリスクである。顧客の出金の求めに応じてリアルタイムで応じる業者が多いが、極端な話、実預託額全額を出金依頼しかつその信託残高よりも今現在の実預託額が大きいときは、その業者は払い出しに必要な資金が不足するリスクがある。その場合は、信託の受渡T+2に合わせて「遅くとも二日後には出します」という条件を約款に書いといたほうがよいのだが、いちいち私もおもだった業者のそれを読んではいない。取り付け騒ぎを想定外にしているのである。

■システム障害リスク

昔と違って最近はあまり目立った障害を聞かないが、ないわけではない。最近は12月に一社ホームページで経緯を開示していたのを見た。24時間取引不能になっていたようだが、さすがに24時間は近年では目立つ。

システム障害の起き方により、システムに入れなくなる、その間に自分のポジションをコントロールするチャンスが奪われ機会損失を被る、最悪強制ロスカットされてしまう、バグレートを拾ったせいで間違って強制ロスカットされてしまう(かつてのZARJPY)、といった事象が大なり小なり繰り返される。
規模が大きくなればなるほどシステムの安定運用のしくみは複雑化する。常にシステム障害がでないように万全の態勢で運用するのは当然の前提だが、現実はそう簡単ではない。新しい技術やソフトが開発されればそれらが試され、少しの犠牲者を出しながらそれらは洗練されそして一般的に普及してゆく。そこに新たな制度対応がのしかかる。そのせめぎあいである。システムリスクを考える時に私が気を付けるのは、上でもふれたが、それは本当にシステムリスクなのか、あるいは市場リスクなのか、あるいはそれらの融合体なのかということである。原因究明や対策を考える時、対象が細菌なのかウイルスなのかで作る薬のアプローチがまったく違うのと同じである。

『証拠金(純資産)が必要証拠金(想定元本の4%)を割ったら即強制ロスカットというルールを自動化し、その処理をレートが更新されるたびに行う』というルールが実装されたシステムにとっての天敵はバグレートであり、スイスショックのような一瞬にして4%を超えるレートのジャンプである。さらに言えば、IEモデルにおいては客を決済したレートとほぼ同じレートで(できれば利益が出る形で)CP側でカバーできるかどうかである。

では、何を持ってバグレートであると定義するかが次に問題になる。こういうパターンの時はバグレートと判断すると定義し実装する。では、その定義によってバグとして排除した後、実はそれは正しいレートであったと認識を変えるまでの間の機会損失や抱える市場リスクはどうするのか。これについては解は存在しないのが実情である。先日のスイスショックで、とつぜんEURCHFが売られるという方向はわかる。だが、1.2でレートが“消え”、その5分後後1.02で再登場したときそのレートを正しいと判断したシステムはどれくらいあっただろう。いやそもそもそれは正しかったのか。何が正しいかを定義することは簡単だがそれをシステムに実装した時点で、現実の“正しい”とは次元が変わる。で、最後は人間の判断となる。が、それすら最近のシステムでは難しい。そういう対応ができるような作りになっていないものがある。自動化と決めたらなんでも自動化になり、手動に切り替えるというオプションをシステムに実装しなくなってきている。

あと違う側面で、投資家がシステムをハックして、業者が想定していない方法で発注してくることで、損害をうけ、結局強制的にそういう客を口座閉鎖するという例が結構聞こえてくる。これもシステムリスクの一つだろう。ただ、高頻度で発注してくる⇒損が出る⇒出て行ってほしい、という理屈は業者としては面と向かって言いづらい。「あなたと取引するとこっちが必ず損するから出て行って」、とは言えない。しかし、「あなたのやり方が当社の想定する”方法“ではないからお断り」、これは言える。その代りその客が損をしていようと益を出していようと関係なく、である。その場合は客を追い出すのではなく、内部のシステムの防御策を講じてそういう隙を狙うような発注ができないように改良することで対応するのが本来あるべき姿であると私は思う。

(後編に続く)

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Posted by 尾関高

プロフィール

尾関高

尾関高

1986年名古屋大学経済学部卒業。1988年サンダーバード経営大学院(アリゾナ州、米国)卒業。主に日短エクスコにて約9年間、インターバンクの通貨オプションブローカーを経験し、1998年からひまわり証券(旧ダイワフューチャーズ)にて日本で最初に外国為替証拠金取引をシステム開発から立ち上げ、さらに、2006年5月に、これも日本で最初にCFDを開始した。
その後米国FX業者でのニューヨーク駐在や、帰国後日本のシステム会社勤務等をへて、現在は、日本の金融システム会社勤務。そのかたわら、本業のみならず、FXや新たな金融市場にかかわるさまざまな分野においても積極的に意見具申中。
拙著に、「マージンFX」(同友館、2001年2月)と「入門外国為替証拠金取引〜取引の仕組みからトラブル防止まで〜」(同友館、2004年6月)、また訳書「CFD完全ガイド」(同友館、2010年2月、著者:デイビッドノーマン)がある。

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