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店頭外為証拠金取引最良執行方針

2015年05月06日(水)

先般開示された「SEC検査方針」の「ト.外国為替証拠金取引業者(FX業者)に係る検証」の項で、

「第一種金融商品取引業者等のうち外国為替証拠金取引業者(FX業者)については、特に自動売買ソフトを利用した取引について適切な対応が行われているか、スリッページについて監督指針や自主規制規則を踏まえた適切な対応が行われているか等について重点的に検証する。また、経済金融情勢の急変等の可能性も踏まえ、為替変動に対するリスク管理の状況についても重点的に検証する。」

とある。この中で3つ目の「為替変動に対するリスク管理の状況」について、いったいどういう視点で「検証」するのかとても興味がある。だれぞ教えてはくれまいか。この論点は、以下の私の従来からの主張につながっていく。

これだけしつこく店頭FXにおける最良執行方針についての提案をしているのは私ぐらいだろうと思うが、1月のスイスショックを経てやはりあったほうがよいと再認識している(勝手にそう思っている)。こうした「最良執行方針」が投資家にあらかじめ開示されることで、異常事態が起きたときの業者、投資家の対処の判断からある程度無駄な行動を排除でき、結果的に不毛な紛議を減らすことにつながると思うからである。つまり公正、公明な結果は、透明性と事前合意によってしか担保されないという前提に立つということである。もっと平たく言えば、損失という結果がもたらす最大の問題は、“感情”であると私は経験上強く思う。自分が被った損失について“納得”がいくか、それを“理不尽だ”と思うか。そうした感情をできる限りうまくコントロールするのは“事前合意”である。そう信じている。そしてさらに誤解を恐れず言えば、そこから生まれる「苦情」こそが業者に対応を迫る力となるわけで、それがなければ何も変わりはしない。

議論がずれていくパターンとして、どうやって不測の事態に対処するかを語りだすと、いつの間にか不平不満をいう個人投資家に如何に納得のいくような「結果」を与えるかという視点に議論の中心が移る(おもねる)ことがある。それはあまりよいことではないと思うのである。こうしたモデルを考える時、市場リスクは予測不能であるという大前提から外れてはいけない。しかし過去の統計は確率計算のもととしては使える。それらにしたがって、恣意的な判断や価値基準を、こうすると投資家から文句がでるから、という視点ではなくて、客観的かつ合理的な対処法は何かという視点で議論が進むことを期待する。さらに言えば、本業界においてはほぼ100%システムドリブンな商品展開になっているが、個人的には外為証拠金取引ほどシステム化が一番進んでいる金融商品はないと思う。製造業でいえば一番オートメーションが進んでいる産業である。その利点を生かして、決めていくべきルールや条件をできる限りシステムで客観的に把握できる要素を利用して指定してゆくことがより問題解決をしやすくなる。たとえば今現在あるシンメトリカルスリッページについての規制の定義もあいまいである。あえてあいまいすることで文章を変えずに対応力を高めるというのは法規制の常とう手段であるが、はたしてそういう意味であいまいなのだろうか。それはさておき、以下私の独善的な「店頭外為証拠金取引最良執行方針」案である。

■店頭外為証拠金取引業 最良執行方針 要件の要旨

●ソースレート

▽顧客に提供する通貨ペアを決めるときに、そのソースレートとして最低でも3つ(例)の独立したCPからレート配信が取れるものに限る。3つ以上取れない通貨ペアは採用しないと宣言すること。3つが妥当かどうかは主観的な問題。

●バッドティック(バグレート)排除ルール

▽これこれのルールでバッドティックを定義し配信レートから排除する。当社のバッドティックとしての定義とインターバンクやその他の市場においてのバッドティックの定義、判断とは独立したものである。実際にそのレートはあったかなかったという議論は不毛であることは前回のスイスショックのデータ分析でもふれたとおりである。実効性があり、客観性があるのは、業者としてこういうルールで有効レートと無効レートを識別するということがシステムに実装されかつ開示されることである。

▽バグレートとバッドティックという2つの似た言葉の違いは何か。バグレートとは最近は言わず、バッドティックと英語では言う。これは、バグではない正常なレートが定義されて初めてバグと言えるのだが、結局そういう定義はほぼ不可能であるという経験則から、システムごとに主体的にこれはバッドティック(悪いレート)として“正常なレートとして”受け付けない、これは受け付けるというルール(仕様)を自らの中で決めてしまうという概念に変化してきたことを暗示している。

●CPの開示

▽若干論点から外れるが、最近気になるので触れる。CPについては、“契約した相手”を開示するもであり、かならずしも取引実態が日々あるとは限らない。契約していても実質取引を停止する場合もあるが、そのたびごとに開示リストを更新しない。開示義務は取引相手なのでプライムブローカースキームを導入しているか、している場合それがどこかは開示しない。あくまでもカバー取引を行う相手がカウンターパーティであり開示義務を負う対象である。

▽気を付けるべきは、CPの役割には3つある。(1)カバー取引をする相手としてのCPと、(2)顧客配信レートを作成するもとになるレートとして採用するCPと、(3)約定成立不成立を判断するレートを作成するもとになるレートとして採用するCPである。これら3つの役割とも常に開示するすべてのCPが担っているとは限らない。

▽最近業者のCPの開示の仕方が甘いと感じている。ホームページ上その開示の場所に簡単にたどり着けないか、永遠にたどり着けない。各社ホームページ(最初のページ)からワンクリック以内で当該開示ページに飛べる場所に配置してはもらえないだろうか。また、口座を持たない人にも見える場所に配置してほしい。いつもCPはどこかな、と探すときに骨が折れるし、時に口座を持っていないと見えなかったりする、と思えるほど探しづらい。法的には口座を持っていない人にも開示されるべき情報のはずである。理想的には業界自主ルールとして、どこももっている「開示情報」の中に「外為証拠金取引カウンターパーティリスト」というような定義された名称のリンクボタンを配置するとかの統一性が欲しいのと、開示する場合、PBスキームを導入している場合はPBがだれかも開示してほしい。これは投資家が口座を開いてから知るべき情報ではなく、開く前に知るべき情報である。業者が負う与信リスクがどのCPに集中しているかは大事な情報である。これに限って言えば当局はガイドラインなりなんなり当該ルールを規定する箇所を改訂するべきだと思っている。しないなら形骸化したこのようなカウンターパーティ開示義務などやめればいい。



つぎに、配信レートがそのまま証拠金口座の強制ロスカット判断に使われるという重要で重大な事実を念頭において以下を考える。

●スプレッド

▽通常「標準」として宣言しているスプレッドは、相場の変動に応じてワイドになることが一般的である。その場合は、その根拠説明を事後的に求められることを前提にスプレッドを広げた判断証拠を保存する。それは必要に応じて協会への開示のみならず、投資家への開示も行うことを想定する。具体的にはCPからの配信レートのログデータを保存する。

●約定判定方式

▽どういうルールでストリーミングの約定判断、拒否判断をしているかのロジックを開示する。

▽また、その他の注文タイプ(逆指値、成行、ロスカット等)における同様の判断のロジックをシステムに実装している通りに開示する。

▽スリッページが発生する場合もそれがどういうロジックで発生するかを開示する。

▽あえて言うが、これらロジック自体は特許性のあるものではない。開示しても資産の棄損には当たらないという前提である。

前回特許について触れたときの説明が舌っ足らずだった気もしているが、短く要点を言えば、こういう金融の仕様とか機能は言ってみれば料理のレシピのようなものだと思っている。料理レシピはテレビでも本でもネットでもいくらでも“こういう味付けや料理法にするととてもおいしくなる”とネタをバラしている。そのレシピで料理店をしている人でもその方法を開示することがある。むろん秘伝だからと隠す人もいる。しかし結果としての料理自体は誰でも味わうことができ、自分の舌で確認し、そのレシピを憶測することができる。結果的にそれを見極め言い当てて、その味を盗んだとしてもトラブルにはならない。それと似ていると思う。異論は当然あるだろうが、こうした金融の仕掛けはおいしい料理を作るためのレシピと同じようなものだと思う。

●配信停止

▽原則CPからのレート配信が全部途絶えた場合、顧客へのレート配信も中止する。ただしその判断をCP数が、3つになったら、2つになったら、1つになったら、のどれにするかは業者の裁量である。そしてその判断基準を公開する。

CPからの配信がなくなっても顧客への配信を継続することは違法ではない。そのレートに自信があれば出せばいいと思う。問題とするのは、いつどういう理由で配信レートを停止するかについて過去の事例を調査し、妥当なルールやガイドラインを策定するというプロセスが業界全体として一定の共通認識を持って実施されているようには見えないことである。これはインターバンクではないかもしれないが、個人投資家を相手とする金融商品を販売する業者としてはあるべき姿なのだろうと察する。少なくとも今までのルールの成り立ちを見る限りそういう価値観があるように見受けられるわりに、こういう部分については手つかずである。

●配信再開

▽レート配信が途絶えたのちに再開する場合、その当該通貨ペアの配信を上記のとおり複数CPが(3CP、2CP、1CP)開始した時点でレート配信を再開するというルールを明確化し、公開する、とはいうもののこれはかなり非現実的かもしれない。

できれば、再開しただけではなくて、試しに業者自身が自己勘定で相手のレートをたたいてみて約定するかどうかを確認してから顧客に配信するソースとして使うかどうかを判断することも時には必要である。それをするだけの時間があるか、それをするに足るだけの経験と見識があるか、さらにはそういう取引を実行できるシステム仕様がそろっているか、というのは常に問われるところであるが、言うは易く実現が難しである。

●約定判定に使う観察対象

 相場が荒れてあとから約定修正をしなくてはならなくなった場合に何をもって約定価格の判断をするのか。先日のスイスショックでスイス円の180円台は本当についていたのか。気配さえあればそれを約定理由としていいのかどうか。そういう問題である。たとえばインターバンクの通貨オプションの権利行使の判断には気配は使わない。あくまでもマーケットで実際に約定がついたレートで判断する。かりにそのレートで約定を確保したいと思えば、あえてその人は一定額そのレートで売るか買うかの行為を行って、約定しているよという証拠を自分の手の中に入れる。スイスフランの例でいえば、画面上に180円台がでたら、それを本物としたければ自分でそのレートで売るか買うかをするということである。そしてこれにはもう一つ条件がつく。インターバンクでは最低でもX百万ドル以上かつY件以上の約定が観察されることというような縛りがある。数千万ドルのオプションの権利行使に、世界中でたった一人のトレーダーが10万ドルだけ約定したという証拠を出されてもそれは“ない”ということである。さらには今回の例で、スイス円の180円台が“あった”とするには、スイス円としてインターバンクで100万スイスフラン以上の取引が3件以上あったことを突き止められるか(数字は例です)あるいは、ドルスイスとドル円の約定で同時刻の約定価格を求めそれらを割り算することでスイス円レートを合成した時に180円以上のレートが出ていれば(裁定価格として)その合成レートは認められるとするか。そういうルールを開示する。とは言うものの、これもかなりの難題である。

●通貨ペア別証拠金率

▽通貨ペアごとに設定される必要証拠金額あるいは率は、当該通貨においてリスク増大の予測ができている場合は、業者の判断で証拠金額、率を引き上げることを躊躇しない。ただし当然ながら一定の周知期間は必要である。現実的に緊急なのだから24時間というのが一つの目安になる。

▽そうした判断自体は業者ごとの裁量であるが、そこにある程度の客観性、業界としての同一性を持たせたいのなら金先協会で主導して決めるのがよいのではないだろうか。例としてNFAがスイスショックの直後に出したルール変更を挙げる。

スイスフランはインターバンクではそのリスク掛け目を想定元本x1.2とするのは“古来”常識である。しかしこの業界ではそうしたカスタマイズはされていないようである。その他にも東欧のマイナーな通貨対円の通貨ペアなども、対ドルでさえおぼつかないのだから、その対円ともなるとインターバンクではまずもて取引はされていない。それらはそのレートを出すCPがシンセティックにレートを生成して流しているものなのでバグも入りやすい。いくら法定要件として証拠金率は4%以上とはいっても、この手の通貨ペアは8%や10%とっても何らおかしいとは思わない。

協会に期待する機能としては、たとえば最近NFAが会員に対して以下の通貨の最低証拠金率の引き上げを命じたのだが、こういう機動的な対応があってもよいと思う。

Swiss franc – 5%
Swedish krona – 3%
Norwegian krone – 3%

Japanese yen – 3%
Australian dollar – 3%
Russian ruble – 20%
Brazilian real – 9%
Mexican peso – 6%

ちなみに業者にとっての市場(通貨)リスクのメジャメントはSingle Currency Methodであるので、上記のように通貨ペア単位での定義ではなく、通貨ごとの定義である。ここから顧客に対する妥当な証拠金率を決める場合、顧客側はcurrency Pair Methodで定義されるため、今Single Currency MethodがCHF=5%,でJPY=3%であれば、Currency Pair Methodは、CHF/JPY=max(5%, 3%)=5%という考え方で決めていくのが妥当なように思う。


以上、私としては「店頭外為証拠金取引最良執行方針」を策定するならこういう点を意識するだろうなという一例をあげたに過ぎない。本気になればもっと細かい内容が入ってくるだろう。そしてそれらは、第3者の客観的なデータの提供、システム仕様の変更追加改良が伴うだろう。また、顧客とかわす約款、取引ルール説明書等にも影響が及ぶだろう。それらのコストを払ってでもやる価値があるかどうかが議論の根底にあるのだが、それも業者ごとに温度差があるものなので、ここで私がいくら主張してもどうなるものでもない。
ただ、投資家の心理から見て、結果よければ一切文句ないという側面は真実だが、逆に結果悪けりゃどう説明されても文句ありというわけでもない。目の前の損失に対してその事実を受け入れるに当たり、人は「納得のいく説明」が欲しいものである。それを指して人は「透明性」だの「公正性」と呼ぶ。事前にリスク開示ができるなら、事前にルールを説明することぐらいなんでもない。あとはそのルールが現実的であり、中立的であり、客観的であるかどうか、である。私は今回のスイスショックのようなことはこれからも起きると思っている。今度は対岸の火事では済まない、そう認識している。




Posted by 尾関高

プロフィール

尾関高

尾関高

1986年名古屋大学経済学部卒業。1988年サンダーバード経営大学院(アリゾナ州、米国)卒業。主に日短エクスコにて約9年間、インターバンクの通貨オプションブローカーを経験し、1998年からひまわり証券(旧ダイワフューチャーズ)にて日本で最初に外国為替証拠金取引をシステム開発から立ち上げ、さらに、2006年5月に、これも日本で最初にCFDを開始した。
その後米国FX業者でのニューヨーク駐在や、帰国後日本のシステム会社勤務等をへて、現在は、日本の金融システム会社勤務。そのかたわら、本業のみならず、FXや新たな金融市場にかかわるさまざまな分野においても積極的に意見具申中。
拙著に、「マージンFX」(同友館、2001年2月)と「入門外国為替証拠金取引〜取引の仕組みからトラブル防止まで〜」(同友館、2004年6月)、また訳書「CFD完全ガイド」(同友館、2010年2月、著者:デイビッドノーマン)がある。

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