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[第215回] ディーリングモデルとリスク(2の2)

2016年01月28日(木)

>>[第214回] ディーリングモデルとリスク(2の1)はこちら

2.3アルゴリズム

世の中いろんなアルゴがある。個人投資家においてはMT4によるEAなどその一つである。業者も以前に比べれば効果的なアルゴの開発に力を注ぎつつあるようだが、大きく分けて業者のアルゴも2種類ある。

2.3.1モメンタムアプローチによる自動カバー

いつカバーをするべきか、今持っているネットポジションのどれくらいの額を、あるいは何割をカバーするべきかを判断する対象として、相場の動きを読むという挑戦がある。この場合アルゴが見ているのは複数のLPから数ミリ秒単位で放り込まれるレートフィードになる。それらの変化の仕方を解析しながら数百ミリ秒先、数秒先、数分先、数時間先といった区分で相場の未来を予測しながら今カバーをするべきか、待つべきかという判断をする。いったん設定してそれがずっとうまくいくようなモデルなどないという前提に私は立っているので、これをやろうと思うなら常に設定パラメータの再評価そしてその動的変更を含めた仕掛けにしないと、それを人的判断と操作だけでやるのは市場の変化に対して“遅れ”が発生するので危険である。長期的にはまず機能しない。ちなみにこれは何をやっても1月のスイスショックや、8月のチャイナ(南ア)ショックのような相場の動きには無能である。結果的にうまくいったとしてもそれはそのときポジションが運よく有利な方向を向いていただけで、アルゴのおかげではない。

相場水準の“動き”と“アマウント”は別の次元のリスクである。アマウントまでアルゴの対象にしているよというならそれは素晴らしいことだが、それはどう考えても不可能であろう。○○ショックのような相場の急激な変動時にたとえLPからレートが来ていてもほぼすべてのレートはたたいても拒否されるような状態のレートを使ったロジックなど絵に描いた餅でしかない。

ところが世の中にはこのアルゴリズムを作って売っている人たちがいる。EAの話ではない。その効果やいかに。

1.3.2 Smart Order Routingによる自動カバー

縮めてSOR(エス・オー・アール)と呼んでいる。これは広義のアルゴリズムの一つともいえるが、一般にアルゴリズムとは切り離して考えることが多い。今、業者が例えば5百万ドルのカバーを発注しようという時に、複数のLPから放り込まれているレートの中からどのLPをどの順番でたたくか。また、それぞれのレートにはアマウントがあるのだからこの5百万ドルをどう分割して発注するか、さらに拒否が返ってきたらリトライをするか、するなら何回までするか、それをどう合理的に判断するか、さらに拒否も成立も返事が数ミリ秒以内に返ってこなかったらどうするかといった複雑な判断処理を行う。これも過去のデータ分析を細かく行うことでかなり性能を上げることは可能である。

2.3.3投資家のプロファイリング

アルゴのもう一つは客側を対象とする。個々の客には癖があるという仮説を前提とする。そういうとときどき「損する客はカバーしないで、いつも利益を上げる客はすぐにカバーする」ということはいけないことのように言う人もいるが、私はそうは思わない。そういう考え方は実態に対する俯瞰的な理解が浅いことから生まれる誤解である。むしろそうすることで業者がより取引コストを抑え、より市場リスクに対して抵抗力を得られるならそれに越したことはない。ただし、その情報を使って、業者が客ごとに違うレートを提示するというような個別の不公平なことをするならそれはいけないことだが、提示するレートと約定判定条件がすべて同じなら道義的にも何ら問題はないと考える。

ここでいう客の「癖」に当たる部分は、市場の情報に対してどう反応しているかを見る。例えば、投資家AとBがいて、Aが取引した後の2秒後のマーケットを比較して、Aが買ったあと相場が上がっているか、下がっているかを調べる。すると例えば90%以上の確率で上がっていたとするとこのAという投資家は“2秒”という将来の予見能力としては極めて高いといえる。一方、Bはその確率が20%だったとする。ただし“2秒”という観察時間ではAが優れているが、この時間を1時間にしてみたら、BのほうがAより確率が高くなるかもしれない。あるいは、Aはスキャルパーで、数分でポジションを閉じるタイプであればそもそも対象とするポジションは1時間後には存在しないというケースもある。したがって、業者が取りうる観察時間は、すべての客のポジションが生きている最短の時間という意味で、かつその業者は限りなくできる限りSTPに近い形でカバーをしたいという前提で、現実的に2秒ぐらいだろうと仮定する。この2秒が業者により実際には10秒かもしれない。それは業者ごとに過去データを分析する以外導く方法はない。たとえば、APIを使ってミリ秒単位の売買を繰り返すようなEAを走らせるHFTスタイルの投資家を多く抱える業者の場合はそのカテゴリーだけでグループ化する必要があるように思われる。

この分析を精緻にすることで、その業者は何秒ごとにカバーに行くのが最適かという一つの解を合理的に得ることができる。仮に2秒をディフォルトとして受け入れて検証した結果、例えばそのインザマネー確率が90%以上の投資家のポジションは速やかにカバーするというルールを実行するべきだという根拠が明確になる。ただし、それによって得られる機会収益がその機能を開発するコストに見合えばということになる。

いつも言っていることだが、どれだけの市場リスクを負うかは業者ごとのリスクアペタイトの問題である。そのアペタイトは、資本金、自己資本規制比率、経営者のポリシーなどの影響を受けるが、その範囲内ではどういう設定値が最適なのかは感覚でやるという時代はもう過ぎたと思う。どの業者も過去データは十分積みあがっているのだから、それらをビッグデータ化し、こうしたシミュレーションを行うことは自分をリスクから守るためにも、またより収益を上げるためにも有益なことである。

2.私のカバーモデル

私がカバーモデルをデザインするなら、ずるい回答のようだが、どういうカバーロジックでもできるように仕掛けを作る。そして何より大事なのは、できるものについてはできる限り同時にパラレルに、リアルタイムにシミュレーションするファシリティを持つことである。そのようなシステムを構築するのに数千万円はかかるだろうか。しかしある程度規模の大きい業者ならそれほど高い買い物ではない。いったんその環境が手に入ればストレステストもそこでできるようになる。これは大きな価値ある資産となる。間違いなく収益の向上や安定性に寄与するはずである。

3.結果に対する評価

問題はそれらを使って得た「収益」に対する「評価」である。これが難しい。例えば昨年と今年で年間の顧客の取引高がほぼ同じだったとき、昨年のディーリング収益が12億円で、今年のディーリング収益が20億円だったとした場合、「昨年の12億円より儲かった。よかった」と評価するか、「さほどでもない」と評価するかは、負ったリスクの額を分母とすることで比較ができる。例えば、昨年の損失リスクとして5億円あったとすれば12億円は、ソルティノレシオ的な見方としては、12/5=2.4となるが、今年の損失リスクとして10億円だったとすれば、ソルティノレシオ的には20/10=2.0となり、ディーリングの「能力」としては昨年のほうがよい成績であったという評価になる。ディーリングの能力評価は絶対額ではない。

一般にリスクリワードの評価としてファンドの世界ではリターン(損益)をその期間標準偏差で割ったシャープレシオが使われるが、これだと偏差が利益側に大きく傾いてもレシオは悪化する。これに対して標準偏差の損失側だけを分母として計算した数値がソルティノレシオで、近年こちらのほうがより重要視されているらしい。あくまでもファンドの世界のモデルなので、為替市場のディーリング損益に単純に当てはめられるものでもない(そもそも本業において「安全資産」とは何だという問いにすらまともには答えられないのだから)が、参考にはなる。
経験上の推測だが、どの業者もディーリング収益(損益)の標準偏差を日時で取り出すと損失で終わる日はほとんどないだろう。したがって、ソルティノレシオは無限大に近づいてしまう。そうなるとやはり儲けた分だけ損したかもしれないという正規分布の概念に立ったシャープレシオのほうが使い勝手はいい。いろいろ考えるが、シャープレシオもソルティノレシオもモデルとしてはそのままでは使いづらいようである。

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Posted by 尾関高

プロフィール

尾関高

尾関高

1986年名古屋大学経済学部卒業。1988年サンダーバード経営大学院(アリゾナ州、米国)卒業。主に日短エクスコにて約9年間、インターバンクの通貨オプションブローカーを経験し、1998年からひまわり証券(旧ダイワフューチャーズ)にて日本で最初に外国為替証拠金取引をシステム開発から立ち上げ、さらに、2006年5月に、これも日本で最初にCFDを開始した。
その後米国FX業者でのニューヨーク駐在や、帰国後日本のシステム会社勤務等をへて、現在は、日本の金融システム会社勤務。そのかたわら、本業のみならず、FXや新たな金融市場にかかわるさまざまな分野においても積極的に意見具申中。
拙著に、「マージンFX」(同友館、2001年2月)と「入門外国為替証拠金取引〜取引の仕組みからトラブル防止まで〜」(同友館、2004年6月)、また訳書「CFD完全ガイド」(同友館、2010年2月、著者:デイビッドノーマン)がある。

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