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[第239回] ダークプール(ミッドポイントマッチング)の仕組みと利用法:パート2

2017年09月11日(月)

【238回】ダークプール(ミッドポイントマッチング)の仕組みと利用法:パート1 はこちら

 では、どういう風に使えば合理的でディーリング収益が向上するようにできるのかという話。大きく分けて2つのアプローチがある。ここではあくまでも対象をFX業者のリスクヘッジという前提で話をする。2つというのは、ミッドポイントマッチングに対してヘッジを行う場合の数量認識を、

@ヘッジしたい“ポジション”として投げるか
A今売りたい、買いたい数量の“注文”としてなげるか

である。

3.ポジションとして

まず@ポジションとして、の例を挙げて説明する。あるFX業者はBブックを採用している前提になる。そこで普通は、一定量は内部マリーをするがそれを超えたらLPでカバーに走る。大体こういうロジックが市場リスクを限定しながら利益を上げていくモデルとして一般的だろう。ここでの「一定量」がその業者のリスクアペタイト上限ということになる。このリス管理モデルを以下表1のような目線で理解する。

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表1

Bブックモデルの内部マリーにおけるポジションの自律性とは、自分が今30万ドルロングにしたいと思っても、客の取引を受動的に受け入れるためどうにもならない。だからこそ一定量の閾値を設けている。また約定価格の自律性とは、放り込まれるポジションの持つコスト=約定価格そのものはコントロールできない。業者が生成し配信するリテール向けのスプレッドはコントロールできるが、どのレートを売ってくるか買ってくるかについてはコントロールできないという意味である。一方、LPカバーにおいてどれだけ売りたいか、買いたいかは業者の意思である。また約定価格の自律性においてもどのレートをたたくかは業者の意思である。言い換えれば内部マリーは受動的ヘッジであり、LPカバーは能動的ヘッジである。

内部マリーはFX業界において「0.3銭固定」といったサービスを提供するうえでそこから収益を上げるためには必須なロジックとなっていると思われるが、その閾値を野放図に広げると優秀な個人投資家の餌食にもなりかねない。そのため業者は市場リスクを会社の資本力を考慮して一定の量にとどめるべく「一定量」を設定しそれを超えたら、LPおいて速やかに全部あるは超えた分だけカバーする。この一定量をよく“バケツのサイズ”という言い方をする。大体一般的なモデルはこうであるとの前提で次に進む。

ここで業者は、もう少しマリー率を高めたい、それができるならバケツサイズをもう少し上げてもいいという場合、内部マリーとLPカバーの間に「外部マリー」というカテゴリー(バケツの2階)を挟む。ここにミッドポイントマッチングを入れる。そうすると上の表1は以下の表2ように展開する。

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表2

マリーにおいて内部と外部が違うだけで、あとは同じじゃないかとも見えるがこれによる効果という意味ではそうではない。今まで上の表のモデルでやっていたときは内部マリー率が40%だったのが、それに外部マリーによるマリーが加わったことで内部マリーが増加し、LPカバーが減ったという事例がある。具体的数字の例を作って表3で比較する。

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表3

ミッドポイントマッチング導入前は客の約定の40%(※)が客同士でぶつかり合っていたとする。つまり60%はLPカバーに出していた。しかしミッドポイントマッチング導入後1年たった数値を見ると、内部マリーが45%に増加し、外部マリーが35%生まれ、結果LPカバーは半分以下の20%に減った。これはとある実際にミッドポイントマッチングを運用するASPがセミナーで開示したデータをわかりやすく数字を丸めて(若干強調して)書いたものなので100%生データではないことをお断りしておくものの、エッセンスとしてはこういう事態が起きている。

※(日本において、実際には60%ぐらいがマリーしていることは協会の公開資料で分かっているがとりあえずここでは仮の数字を例として挙げている)

協調するべき点は、外部マリーを入れたことで “内部マリー率が上がった”ことである。これは外部マリーバケツができたことで、内部マリーというバケツに空きが出る時間が増え、それにより内部マリーバケツの 回転率が上がった ことを意味している。これがとても重要な点である。今までは内部マリーバケツがあふれるとすぐLPカバーに行っていた分がその前にもう一つのバケツを用意することでマリーが継続できるという状況が生まれ、結果内部マリー率が上がり、最後のヘッジ手段であるLPカバーへ行く比率が下がったことがわかる。1階建てバケツが2階建てバケツになった効果といえる。

3.1. Bブック=ダークプール

ちなみに、こうして比較してみてわかると思うが、業者が内部マリーしているこのバケツも実は「ダークプール」の一種である。ダークさという点では何も外部に開示していないのだから世界的に見て一番ダークなプールである。Bブックで内部マリーをしているFX業者はみな純粋なダークプールを抱えているわけで、その運用をやめる業者がいないということなら、その効果については十分経験しており肯定的評価をしているということになる。

ミッドポイントマッチングを外部マリーとして導入する場合、業者側のSORには表4のような制御を施す。

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表4

上で触れた「リスクアペタイト」に絡む話だが、これをやるにはこの業者が市場リスクコントロールとして50万ドルまでと定義したバケツサイズを80万ドルまで引き上げることを許可するとうプロセスがあっての上表の例となる。30万ドル分引き上げても市場リスクコントロール自体はできる。その分ディーリング収益が向上するという仮説を受け入れればいわゆる“コスパ”の観点からすくなくとも導入実験としては極めてコンサバな、現実的な例として書いた表である。

3.2 ディーリング収益の向上の源泉

このような設定で臨んだ結果ディーリング収益が20〜30%上がった理由について解説する。表5でまとめるように、仮にFX業者の普段カバーで使うLPのBBOスプレッドが0.25であるとする。ドル円を想定すれば現実的な数字だろう。LPでカバーするということは取引コスト=0.25ということになる。一方内部マリーは一切外部で取引しないのだからこの取引コストはゼロである。では外部マリーのミッドポイントマッチングはどうか。このミッドポイントマッチングにおいて約定レートに使われるベンチマークが原則リットプールの仲値であると仮定すればこの取引コストは0.125となる。お分かりと思うがここでいうコストは一見機会コストに見えても確実にPLに影響を与える。むろん、想定として同じ時間において、

LPのベストビッド < ミッドポイント < LPのベストオファー

の不等式が成立する前提だが、私の知る限りのベンダーにおいてこれは論理的にかつ現実的に保証されている。

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表5

この相対的コストともっと上の表のヘッジ取引高の割合を掛け算すると表6のようになる。

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表6

上の表の円の値を用いて計算すると、内部マリーはそもそも外部の取引コストは発生しないので0円となる。LPカバーは250円x60%=180円となり、合計180円の取引コストがミッドポイントマッチング導入前のヘッジモデルの取引コストになる。ミッドポイントマッチング導入後のケースでは、外部マリーで44円の機会コストが生まれ、LPカバーが60円に減っている。そして合計が104円となり、前者のモデルにくらべて取引コストが76円分低下した。これは180円に対して42%の取引コスト縮小を意味する。すなわち収益がその分増えたことになる。このモデルで展開した42%という数字は1年間このモデルを採用し最適化努力をし続けた海外の業者の実績値に比べれば少々できすぎだが、20%や30%の向上は十分見込める。こうして理論上の数字が実現する。なぜそれが起きるかといえばこのFX業者の世界はモデル通りの結果が出るほどに母数(サンプリング)がすさまじく短時間で積みあがるからである。さいころを3回振って期待値通りの目(3.5)が出る可能性は低いが、1万回やればほぼ期待値通りの結果が出るということである。机上の理論や統計学的アプローチが実際の市場で試すと期待通りの結果を出してくれる。それが割と早い時間で観測できる点が、金融の魅力的でもある。

3.3 実装

外部マリーの場としてのダークプールでヘッジを行うためには、マリーしたいポジションを常に更新しながらさらし続けることが最も効率的である。要するにBブックの内部マリーと理屈は同じである。つまりセッションはつなぎっぱなしで、マリーしたい(“カバー”ではない)サイドのアマウントだけをひたすら更新し続け、いらないときはアマウントを0にすればよい。上の例で、ネットポジションが50万ドル未満の時はこのミッドポイントマッチングにさらすアマウントは0になるし、ネットポジションがたとえば40万ドルロングから次に80万ドルに一気に増えたら、「30万ドルのロングポジションをさらしますからだれかのショートとぶつけてください」という「注文」ではなく「インタレスト」を「発注」ではなく「さらす」ことになる。繰り返すが、この振舞いは内部マリーと全く変わらない。それが業者内部で起きているか、外部で起きているか、だけの違いである。
ここまでを正確に理解してもらえれば「外部のダークのミッドポイントマッチングといういつ約定するかもわからないところに“注文”を置きっぱなしにするなんてできない」という見方は自分がBブックで何をしているのか、そしてそのモデルの問題点は何か、さらにダークプールの利点は何かについて誤解があるということに気付いていただけることと思う。

既存のBブックモデルにおける内部マリーもダークプールを使った外部マリーも、概念としては、
「注文」ではなく「ポジション」
「発注」ではなく「さらす」
「たたく」ではなく「マッチング」
が基本となるが、ダークプールによっては、通常のFIXのオーダールーティングにうまく仕様を合わせて「発注」として受け付けるものもある。この場合はリミットオーダーとして投げる。そしてそれが、プールが観察するミッドポイントにヒットし、その時相手がいると約定するというロジックもある。その場合、例えば買いの場合、通常のLPカバーで出すリミットはそもそもマーケットメイカーのオファーレートをたたくつもりでリミットに入れているのだから、それよりは有利なレートで約定するという理屈になる。もしくは、ふつう買いたければLPのオファーをたたくが、あえてそのビッドを指値に入れてここに置いて少し相場の揺らぎを待つというやり方もある。

こうした新しい概念に出会うとき、その言葉の違いが意味する“概念”に集中する。それは理解が深まるにつれてやがて“仕様”として展開し具現化する。そしてそれは現実世界で開花し、合理性という美光を放つ。そして最後に“利益”という形で結実する。重要なのは、美光を放つまで頭の中でリモデリングを繰り返すことである。

ひとつ始めるにあたり大切な留意点として、こういう新たなものを導入するときには結果の評価モデルをあらかじめ決めておくことが必須条件である。そしてそれに必要な情報は始める前に想定してシステムのどこかにログとして記録するなりメッセージの中のタグに埋め込むなりして客観的集計と評価計算が容易にできるようにしてから始めることである。決して感性だけで結果を評価しない。

(続く)




Posted by 尾関高

プロフィール

尾関高

尾関高

1986年名古屋大学経済学部卒業。1988年サンダーバード経営大学院(アリゾナ州、米国)卒業。主に日短エクスコにて約9年間、インターバンクの通貨オプションブローカーを経験し、1998年からひまわり証券(旧ダイワフューチャーズ)にて日本で最初に外国為替証拠金取引をシステム開発から立ち上げ、さらに、2006年5月に、これも日本で最初にCFDを開始した。
その後米国FX業者でのニューヨーク駐在や、帰国後日本のシステム会社勤務等をへて、現在は、日本の金融システム会社勤務。そのかたわら、本業のみならず、FXや新たな金融市場にかかわるさまざまな分野においても積極的に意見具申中。
拙著に、「マージンFX」(同友館、2001年2月)と「入門外国為替証拠金取引〜取引の仕組みからトラブル防止まで〜」(同友館、2004年6月)、また訳書「CFD完全ガイド」(同友館、2010年2月、著者:デイビッドノーマン)がある。

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