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為替コラム

[第251回] 取引先リスクの計算ルールが変わる

2019年01月21日(月)

 多くの店頭FX業者がカバー先とするのはいわゆる G-SIFIsと称される国際的な銀行と、海外のヘッジファンドである。少ないところはそのうち1,2社で多いところは10社以上の相手と契約している。ただし、多くの業者はそれらの決済リスクを1〜2の銀行のPBに集約している。業者がPBを使う理由は、@業務の効率化、Aそれによるオペレーション上のミスの回避、Bさらに市場リスク管理の効率化、Cそして決済リスクの低下(決済資金の少額化)があげられるだろう。10以上もの取引先とそれも10種類以上の通貨ペアの決済を日々、個々に行うことはその分ミスを誘発しやすいし、それぞれのカバー先に資金を預けて日々決済を行うことは、資金効率が悪い。また、カバー先ごとにばらばらになったポジションを管理していると全体としてどういう市場リスクを抱えているかをリアルタイムに管理するためのシステムもそれなりに高度にならざるを得ない。それだけの業務能力を持ち合わせる業者ならなんでもないが、みんがみんなそうではないかもしれない。さらに言えば、「店頭FX業者はカバー取引と称するLPとの取引はすべてその市場リスクを減殺するためにするものである」という“前提”を不文律として持っているという“前提”で読まなくてはならない。

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さて、FXが金先法に取り込まれる時から主張していることに舞い戻る。現法は「カバー取引先」という言葉を正式に使っているが、話の趣旨が決済や与信リスクの場合で上記のようなPBを使っていると、「取引」と「決済」はその主体が分離されるため、今回の改正の内容を読むにつけ矛盾が生じていると思うのだが、その点はいまだ変えてくれていないので読み手は随時解釈を変えなくてはならない。「カバー取引先」であってもスポークバンクであれば、そこに与信リスクも決済リスクもないことは皆さんご承知のとおりである。なので、取引先が何社かという文脈ではスポークバンクをカウントしないはずである。あくまでも決済リスク(=与信リスク)を伴うPBがいればそこがカウント対象になる。そう信じるのだが、いままでの経験からそうでない解釈が出てきたことは何度かあるので油断はしていない。

PBというサービスが生まれた理由はそうした(上記の@A・・・)問題を解決したいというヘッジファンドに銀行が応じたものだったと思う。私がこれを導入した理由もそうだった(地味だがこれも日本初だったと相手から聞いている)。ただし、PBが万能というわけでもない。欠点としてはそのPBが破たんしたらどうなるということである。その瞬間その業者はカバー取引ができなくなる。しかし、それを回避するために、業者にはいくつかの方法がある。まずは@2つのPBを持つことである。それも一つは米系でもう一つは欧州系とすることである。歴史的に金融業界は、というより経済として、米国が落ち込んでいるとき欧州はそうでもない。また逆もしかり。であれば、それらの地域的な逆相関性(もしくは低相関)を利用して米国で一つのPB、欧州で一つのPBをもつという戦略は有効だろう。私もかつてそうしていた(以前にも触れている)。さらにもう一つの手段は、APBのスポークとなるカバー先ともダイレクトに取引する契約は結んでおくことである。これがあれば、PBが破たんしたら速やかに直接取引を開始することができる。ただしPBに預けた資金は凍結されるだろうからそれなりの余裕資金が必要になるのだが。Bさらにその辺の資金余力の問題を解決したいならどこかの銀行(多くはメインバンク)の与信枠をLG(※)として出してもらって、それを使ってカバー先との取引を行うという仕組みもある。仕組みとしてはあり得るが、それを銀行からもらえるかどうかは業者の信用力を銀行がどう評価するかにかかっている。

※LGが絡んだ場合はどう計算するのだろうか。今回の改正はその辺までは網羅していないようだ。

さて、こうした取引先リスク管理の手法を駆使している業者にとって、これ以上の合理的で効率的な取引先リスク回避手段はないと私は今でも思っている。これらの手段を講じていれば、カバー先(PB)が破たんしたときのリスクへの対応としては合理的で最善であるといえる。しかしながら今回のルール変更はさらにその要求レベルを、合理性を犠牲にしてまでも上げているように見える。私はその上げ方にあまり納得はいっていない。上がることは仕方ない(かな?)としても、問題はその変え方であり、そのルールに見える不合理である。

現在の規制において取引先リスク相当額を計算する場合、おおざっぱに言って格付けがあるかどうかを判定基準として掛け目が規定されている。格付けだけで1.2%か、なければ25%というのもリーマンショック以降も見直されていないというのはどうかと思っていたが、このモデル自体は悪いとは思っていない。手を加えるとしたらもう少し細かく掛け目の定義を今どきのリスク計量モデルでも駆使して算出しなおせばいいと思っていた。しかし今回の改正は、そういう論理性とかはなく、ただ単に取引先リスクを分散させることを目的とし、かつ与信力が低そうな相手(海外のヘッジファンド)と取引させないという意図がまずもって見えてくる。せっかくいいモデルだったのにわかりづらいモデルになってしまったという印象はぬぐえない。まるで所得税率のように、いくらからいくらまでは何%で、いくらからいくらまでは何%というようなやり方はそのブラケットを仕切るときの判定根拠が恣意的になるからきれいではない。客観性とか合理的根拠がより不鮮明になるからである。金融は本来そういう要素を嫌う。

さらに今回は、取引先リスクなしの金ぴか対象として清算機関による集中決済が指定されている。これもどうかと思う。そう思うのは私だけではない。PBとしてのG-SIFIsの与信力と店頭FX業者から集める共済金とではどっちが上かといえば明らかに前者である。それに負けまいと清算機関がより多くの資金提供を会員に求めれば、あきらめる業者も出るだろう。たしかに、銀行の方が上だといっても銀行は本業界に対するリスクだけを負っているわけではないからそれだけで上だ、下だというのはフェアではないけれど、常識論としてはそうである。毎回そうした公的基金が破たんすると、税金の出番になるのだが、かならずその是非が巻き起こる。欲を搔いた投資家の損をなぜ税金で補てんするのかという話は何度も耳にした。個人投資家の資産が信託保全で守られるなら、業者はつぶれるならつぶれればいいということではなかったか。いつからそこまで守ろうという話になったのか。FX店頭業者発のシステミックリスクなどないことは語るまでもない。

仮に業界全員がこの集中決済に参加するとした場合、何が起こるか。まず業者が今X銀行のPBを使っている場合、X銀行にもこの集中決済に参加してもらわなくてはならなくなる。私の常識から言えばそれに素直に応じる銀行は少ないだろう。最終的にまわりの雰囲気を忖度して参加するかもしれないが、本心は嫌なはずである。なぜなら、今現在うまくいっているのに、余計なコストを払い、かつ決済システムリスクを増やすだけだからである。PBまるごと集中決済をかませるということは一つの取引に対して2重の決済業務が発生するということである。ふつうそれを人は無駄と感じる。さらに、その追加のコストはやがて投資家サイドにしわ寄せされることになるだろう。それはスプレッドがワイドになるという現象として現れるかもしれない。

もうひとつ集中決済の欠点として、会員のどこかが単独で破たんし集中決済側として未収→引当てが生まれれば、それは共済金(本来共済金という名称ではないがわかりやすいから使う)を使って支払われる。それはメンバーからすれば迷惑な話である。引当てた(自己資本の棄損)分おかわりを要求されるのは当然だし、それは結局業者にとっての集中決済機構に対する与信リスクになる。つまり掛け目ゼロは理論的にも現実的にも矛盾しているということになる。拠出した資金は固定化された自己資本になるのも業者としては困った話になる。一方PBであれば他の業者にそういう迷惑は掛からない。また、PBとして集中決済機構に参加する銀行側が破たんして同じことが起きても共済金は使われるだろう。ただし、この時そのPBが店頭FXの多くの業者のPBであった場合、果たしてその額を共済金で埋め切れるだろうか。現時点で私は共済金の額がどう決められるかを知らないので何とも言えないが、その合理的な額を算出するのは困難であり、責任の重い仕事である。

ちなみに、の話を2つ。

この議論に個人投資家のリスクの話は入らない。なぜならそれはすでに信託分離によってリスクが遮断されているからである。

ヘッジファンドでFXのLPになる、なれる相手の中には世界で一番資本市場取引をたたき出す伝統的なファンドもいる。かれらをLPにすることでよりタイトなレートを顧客に出すことができる可能性のあるファンドはいくつもある。しかしこのルールが適用されると、かれらが銀行PBの下に入りでもしない限りLPとして受け入れられる業者は少ないだろう。

今回のルール改正はシステミックリスクとはあまり関係はない。カバー先である銀行が破たんするというシナリオは、それ自体システミックリスクの発端かあるいは結果として生じるものだが、その余波として一部の店頭FX業者が連鎖破たんしたとしても、守るべき個人投資家は信託保全によって守られるという前提が正しければ、かつプロは自分で自分を守れという考え方にのっとれば、今回のようなルール改正の必要性はなかった。そもそもそういう事態が起きているときにFX業者の心配などしている暇はないだろう。今、一部の業者破たんのことをこれだけのコストかけて議論するタイミングなのだろうか。それはリーマンショックで経験済みである。そうならないための銀行の在り方についてのルール改正や対応はこの10年かなり進んだと思うのだが。なぜこれを今だったのかが個人的には不可解である。

金融は常に合理性、市場裁定を重んじるものだと信じている。わたしはそこに美を見るのだが、それがここにはない。このスキームはビジネスとして成立するのにはハードルが高いし、システミックリスクの対応策としては気持ちよく理解できない。単に、FX業者を銀行の破たんリスクから守りたいという不可解(?)なメッセージしか伝わってこない。別のところでも言っているが、客の資産が信託で守られるならあとは、「プロは、自分の身は自分で守れ」である。金商法も本来基本はそこのはずであった。とはいえもう決まったことなのである。

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Posted by 尾関高   パーマリンク

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プロフィール

尾関高

尾関高

1986年名古屋大学経済学部卒業。1988年サンダーバード経営大学院(アリゾナ州、米国)卒業。主に日短エクスコにて約9年間、インターバンクの通貨オプションブローカーを経験し、1998年からひまわり証券(旧ダイワフューチャーズ)にて日本で最初に外国為替証拠金取引をシステム開発から立ち上げ、さらに、2006年5月に、これも日本で最初にCFDを開始した。
その後米国FX業者でのニューヨーク駐在や、帰国後日本のシステム会社勤務等をへて、現在は、日本の金融システム会社勤務。そのかたわら、本業のみならず、FXや新たな金融市場にかかわるさまざまな分野においても積極的に意見具申中。
拙著に、「マージンFX」(同友館、2001年2月)と「入門外国為替証拠金取引〜取引の仕組みからトラブル防止まで〜」(同友館、2004年6月)、また訳書「CFD完全ガイド」(同友館、2010年2月、著者:デイビッドノーマン)がある。

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