■「外為人物伝〜その素顔〜」
為替業界にはなかなか個性的な方が多い。しかし、個人投資家の方たちがそれら為替ディーラーなど市場参加者に直接接する機会は限られます。せいぜい講演会やテレビで為替の相場見通しを拝聴するぐらいでしょうか。当コラムでユニークな人柄や個性などの「素顔」を余すところなく紹介していければと思います。
■執筆者PROFILE
斎藤登美夫 氏
FXニュースレター 代表
約13年間の為替専門誌記者生活を経て独立。現在は個人投資家向け為替情報会社『FXニュースレター』の代表を務める。
かつては、金融情報誌『ユーロマネー』のベストディーラー・アンケート「短期予測・銀行投票部門」でランクインした経験も。ディーラー、アナリスト、霞ヶ関などの豊富な人脈を生かした取材・情報提供には定評がある。

コラム / 外為人物伝〜その素顔〜 第29回

シブサワ・アンド・カンパニー代表取締役  渋澤 健氏

「“資本家”の育成教育が必要不可欠(後編)」

2006年1月10日

◎非常に大事な「豊かさ」と「健康」

―さて、前編では『JPモルガン銀行』や大手ヘッジファンドである『ムーア・キャピタル・マネジメント(以下、ムーア)』時代のお話を中心にうかがいました。後編では、そののち渋澤さんが『ムーア』をお辞めになった経緯から、ますお聞きしたいのですが。お辞めになったときは、確か『ムーア』の東京駐在員事務所代表でしたよね。

 そうですね。理由は幾つかあります。ひとつは、結婚して子どもが出来たということ。独立するには、最初で最後のチャンスではないかと思ったことが大きいですね。振り返ってみると、わたしの先祖である渋沢栄一翁が『第一国立銀行』を作ったのが33歳のときでした。当時のわたしは40歳になる手前でしたから、偉大な先人に触発されてという側面があったのかも知れません。

 それに思い返すと、『ムーア』のような著名ヘッジファンドでも従業員はせいぜい100〜200人程度。つまりは中小企業なんですよね。それでも世界を相手に大きな取引をやっている。そんなところにも魅力や可能性を感じた結果、独立という道を選びました。ただし、『ムーア』とは喧嘩別れしたわけではありません。いまでもビジネス上の付き合いはありますし、良好な関係が続いています。
 
 
そんな渋澤さんが、いま現在されている仕事について少し教えてください。

 色々なことをやっていますので、なにを話すれば良いのか(苦笑)。ただし大きくは2つの事柄にわけられますね。わたし自身は「ウェルス」と「ウェルネス」と言い方をしていますが、人間が生活する際に非常に大事なことである「豊かさ」には、経済的な面と健康・知的・感性の面が両方必要だと思っており、その両方に携わる仕事をしています。

 「ウェルス」の面では、『シブサワ・アンド・カンパニー』として『ムーア』や『ボイジャー・マネージメント』などヘッジファンド・マネージャーを例えば機関投資家に紹介するような仕事をやっていますし、そのほかでは日本人ヘッジファンド・マネージャーの独立を支援するプラットフォームを提供する『ブリッジ・キャピタル証券』など資産運用分野の新興企業の幾つかで社外取締役などをやっています。

 一方の「ウェルネス」面としては、創薬研究者知財権ベンチャーである『レナサイエンス』の社外取締役や、『渋沢栄一記念財団』の理事などをしています。
 
 
―「ウェルス」と「ウェルネス」ですか。なるほど。

 世の中の成功者と言われる人をみると、色々な方がいらっしゃいますが、ひとつ共通していることがあるように思います。それは成功者の多くは本当に「人生をとても楽しんでいる」ということですね。これは「成功した」から「楽しんでいる」のではなくて、逆です。「楽しんでいる」から「成功」したのです。
 
 
―いまうかがったお話が、個人投資家に対してのアドバイスになったような気もしますが(笑)、それ以外でなにかあるようでしたらお願いします。

 そうですね。ひとつは「失敗を恐れるな」ということでしょうか。一番安いところで買って高いところで売る、ということは不可能ですし、失敗は誰しもあるものです。クヨクヨせずに、明日があると気持ちを切り替えて取引をして欲しいと思います。

 そして売買というものは、「後で振り返ってみるととても簡単に見える」もの。つまり、後講釈ならば幾らでも出来ますが、その場その場ではとても難しい判断を迫られることがあります。これも頭に入れておいた方が良いと思いますね。
 
 
―そういえば渋澤さんは、「投資家」だけではなく「資本家」についてもお考えがあるようですが。

 いわゆる「団塊の世代」を新聞や雑誌などで「投資家」と称しますが、わたしは違うのではと思っています。では何がいまの日本で必要なのかと言うと「プチ資本家」である、と。

 投資家と資本家の違いは、前者が「利益を上げる」つまりおカネを作る、増やすという作業を中心にする人たちですが、後者は「おカネを作る」ことと同時に「おカネを使う」ことも問われていると思います。それは、再投資かも知れないし、ベンチャーの支援かもしれないし、社会貢献かもしれない。残念なことに、前者についてはセミナーやハウツー本などをはじめ勉強する機会はありますが、後者についてはまったくと言ってよいほど機会がありません。「投資家教育」も必要でしょうが、もっとも教育が必要なのは「投資家」ではなく「資本家」でしょう。何故なら、我々は「投資主義」ではなくて、「資本主義」の社会に住んでいるのですから。
 
 
―本日は長いあいだ、ありがとうございました(了)。

【インタビューを終えて】

 渋澤さんがヘッジファンド出身者ということもあってか、これまでと異なる話が多く聞かれ、筆者もとても楽しい時間を過ごさせていただいた。本当にありがとうございます。
ところで、渋澤さんは金融に関して何冊かの本をすでに出版されており、来年初期にもオルタナティブ投資についての本を『実業之日本社』から出す予定になっているそうだ。また、このあとにもご先祖である渋沢栄一氏に関する本を出版される予定とのこと。筆者も是非楽しみにしていたいと思う。
さらには、ご多忙にもかかわらず「絵本」を出してみたいとの野望があるそう。意外・・・といっては渋澤さんに失礼だろうか。すでに大まかな構想は出来ているようだが忙しく、アウトプットには至っていないという。あまり大きな声では言えないが、実をいうと筆者も絵本は大好きで10冊強を所有している。そのなかの一冊に、渋澤さんの著作がいつ加わることになるのか、いち読者としてそちらの完成も楽しみにしていたい


バックナンバーはこちら

コラムPV 

Copyright (C) 2005 Capital F Co.,Ltd. All Rights Reserved.